本装置は、患者様の検体から抽出されたDNAをPCR(polymerase chain reaction)により増幅(蛍光ラベル化)した試料を所定の試薬容器(市販PCRチューブ)に入れた測定サンプルと、検査目的に対応したDNAチップを本装置の所定の位置にセットすることにより、以後の反応(ハイブリダイゼーション)、洗浄、検出および解析を自動で行う検査装置です。
この検査により、患者様の遺伝子多型や遺伝子変異を判別することができ、抗がん剤の副作用予測やどの抗がん剤治療を行うか等の治療方針の決定補助に役立てることができます。
本装置は、卓上型で最大で32個のDNAチップの自動検査が可能です。測定時間は40~80分と短時間での測定が可能です。
DNAチップとは、基板上に、検査する目的に応じて複数の遺伝子のDNA(デオキシリボ核酸)断片を固定し、
検査対象となる細胞のDNAと反応させ、結合させます。
基板上のどのDNA断片と結合したかを検出することにより、対象の細胞が目的とするDNAを持っているかなど確認することができます。
また、基板上にDNA断片が配列(array)されていることからDNAマイクロアレイとも呼ばれます。
DNAチップの医療用途
私たちの一人一人の遺伝子(DNA)は、少しずつ違っています。例えばアルコールに対する強さには個人差があるのは、遺伝子の一部に違いがあるためです。このような、遺伝子の違いにより、病気の罹りやすさや、特定の薬の効き方や副作用の違いがある場合があります。これを事前に確認し、治療法方針の決定補助に使います。例えば肺がんに良く使われる抗がん剤の中には、効果がある人は2割程度しかない薬もあります。また、人によっては、副作用がひどく途中で服薬を中止し、他の治療方法に変更しなければならないこともあります。これを事前にDNAを検査することにより、薬が効く人や副作用が少ない人をある程度予測できるようになります。これにより有効な治療を行うことができるようになります。また、副作用の強い人には、副作用のため体力を落とすことなく早期に異なる治療を行うことができます。
また、がんの種類を確認し、その後の治療方針の決定に使われることもあります。例えば、同じ部位のがんでもがんの遺伝子の違いにより複数種類のがんがあり、効果がある薬が異なる場合や、進行度に大きな違いがある場合があります。このうちのどの種類のがんかを確認し、以後の治療方針の決定補助に使うことができます。更に、外部から侵入した病原菌やウィルスのDNAを確認することにより、どの種類の病原菌やウィルスなのか、薬剤耐性を持った菌なのかを同定することもできます。これにより適切な治療を行うことができます。
DNAチップの食品用途
食品の中に、食中毒菌などが含まれているかどうかの検査は、現在主に、培養法によって行われています。これは、食品サンプルを培地で培養し、増殖したコロニーを同定する方法です。しかしこの方法では、少なくとも4~5日の時間がかかります。これに対してDNAチップを使った方法では、活性な菌を同定するために培養工程を入れても24時間程度で結果が出るため、今後はDNAチップを使った方法が増加していくものと思われます。
また、食品偽装などの問題がありましたが、100%牛ミンチ肉と表記されている製品に羊肉を混ぜて販売している事例が欧州などでは発生しています。これまでの研究等では0.01%の羊肉の混入についても遺伝子検査により確認できるとの報告もあります。牛、豚、馬など、どの動物の肉なのか、同じ牛肉でも、和牛などどの種類の牛肉なのかなども簡単にわかるようになります。